【400字以内小説】#1 もしも、猫が

「もしも、猫が」

その日、十数年前に逝った猫が電話をかけてきた。しかも猫はアメリカ人になっていて英語で話した。最初に妻が電話に出て(自宅の固定電話が鳴ったのだ)、必死に英語で応対した。それから私が受話器を取り、やはり懸命に話した。ひと言だけ私らしい英語で紡げた。こうだった…… No, I won’t look for it, just see it. (大丈夫、無理に探したりしない。死んだお前がいる世界は、うん、あるんだから)

2019/06/16