【400字以内小説】#5 Jamming by Jam

「Jamming by Jam」

さて実験です。部屋に、瓶詰めのジャム、犬(できれば小型犬)、猫、ぬいぐるみの熊を置いて、そっと室外に出ましょう。ジャムは苺かラズベリー、そして蓋は外しておきましょう。帰宅は数時間後がよいです。部屋に戻ると……おや? ジャムが減っています。というか、ほぼ食べ尽くされています。では犯人はいったい何者なのか。あなたは犬をにらみます。その犬は思わず目をそらします。ついで猫もにらみます。猫は、そもそも目なんてものはそらしていましたが、かわりに尻尾をシャワシャワ振って、熊のほうを指します。半信半疑でそっちを見ると、なんと! 熊の口にはジャムが! さあ、ここが実験の要点です。あなたは、いま、「盗み食いの犯人は熊のぬいぐるみだ!」と信じてしまいましたか? しかしながら、どうなのでしょう。そういう確信を持ってしまって、さしつかえないものなのでしょうか、この世界って?

2019/09/15