【400字以内小説】#7 いま、ここにいないとしても

「いま、ここにいないとしても」

「ねえ、あの世ってあるの?」
「あの世ってなんだい?」
「いわゆる死後の世界」
「死後の世界は、あるよ。もちろんある」
「断言できるんだ?」
「だって、死後にも世界はあるのは当然だ。死んでからも世界は続いている」
「あのさ、意味の取り違えが、起きてない?」
「『死後の世界がある』ことと『死後に世界がある』ことはおんなじだ。だって、ある人間がさ、男でも女でも日本人でも外国人でもいいんだけどさ、たとえば二十歳だったとしてさ、自分の生まれる前の二十一年前にも、やっぱり世界があったんだって信じられるのは、凄くないか? そして、死んでからもあるって確信できるとかさ。その、『自分抜き』でも存在できてる宇宙があるんだから、『自分込み』の宇宙なんて、死んでもけっこう簡単にあるんじゃないか?」
「それって、あの世でって、そういう設定?」
「うん」

2019/10/07