1年が閉じる

1年が閉じる

2019.12.14-12.27 東京・福島(郡山)

こんな奇妙な年は初めてに等しいのだが、いわゆる「今年をふり返る」余裕が私にはない。いったい、今年はどんな年だったのか? わからないので、ひとつだけ奇蹟を綴る。2006年に拙著『LOVE』が三島由紀夫賞をいただいた際に、某社から観葉植物を贈られた。その名のとおり「葉を観賞する」熱帯原産の植物だ。私は、以来、ずっと葉を観てきた。13年と半年、葉を観続けてきて、先月「……え?」と思った。何かが出てきた。花だった。蕾だった。そして、ほぼひと月後、開花した。いまも満開である。

私はいま喪中なので、正月は当然だが、クリスマスも祝わなかった。しかしクリスマスに言及する原稿を書きつづけた。私は『曼陀羅華X』のその続きを書いている。あの世界(今年9月に「新潮」誌上に発表した『曼陀羅華X 1994−2003』)に戻る、というのは、肉体的に相当なきつさを持っているのだが、たぶん、現在のところは入れている。「入る」とは、その物語世界に、ということだ。私はいま喪中なので、年末も年始もあったものではないから、このまま書きつづける。私はふたつの世界(この現実世界と、『曼陀羅華X』の物語世界と)を往き来しながら、年を越すのだろう。

それと、じつは徹底した肉体の鍛錬に入った。来年、私はこの体を酷使するプロジェクトを抱えている。その具体的な様相をスポーツクラブの親しいインストラクターさんに話して、鍛錬メニューを用意してもらった。きつい。しかも、こうした行為も久々なので、指導が頭に入りきらない。私は必至だ。なんとかメモを取り、メモを整理して、まずは頭に叩き込み、それから肉体に馴染ませる……つもりだ。やるしかない。そのプロジェクトは、私が自分自身に厳しく向き合わない限り、関わる方々に真摯に向き合うのは無理だろう、と容易に察せられるから。

小説、すなわち『曼陀羅華X』の執筆と『木木木木木木 おおきな森』の単行本の刊行と、上記したプロジェクトと、あと、もうひとつ前進する(可能性のある)企画とがあって、それらが来年、そして再来年へと続いている。ひとまず、やれるだけやってみる。いまのところ人前に出るようなイベントはいっさい設定していないのだけれども、いずれは出るのだろう。まずはここで、よいお年をお迎えください、とだけ伝える。