【400字以内小説】#9 クリスマスのサバイバリスト

「クリスマスのサバイバリスト」

その夜の午前二時頃、突如あなたは目を覚ます。憶えているのは昨夜、ケーキをたっぷり食べたことだけ。続いてあなたはハッとする。そこが自分の部屋ではないのだ。壁の色がおかしいし、天井の具合も妙だ。だいいち真夜中であるはずなのに明るい。ここはどこ? やがて、あなたは自分がチョコレートの家に閉じ込められているという事実を知る。愕然とする。出口を探す。が、ない。どの窓も開かない。玄関の扉もだ。どうしたらいいのか? 苦悶して、それからあなたは閃きを得る。そうだ……この家、食べちゃえばいいじゃん。そうやって齧りはじめたのだけれども、いったい何日後に脱出可なのか。胃がもたれた。それに、こんなに栄養が偏って大丈夫なの? 不安はつのる。が、そんな時、あなたはチョコレートに埋もれたアーモンドの種を発見するのだった。おお、この調子ならマカダミア・ナッツもあるかも!? 希望を得て、あなたはガリガリと食べ進むのだった。

2019/12/24