まずは救出されたお便りから。僕は前回、本当はこんなお便りを書いていたのでした。奇蹟的に iCloud 経由で発掘できたので(ていうか iCloud 凄すぎ)、まるまる以下に引用します。これです。「30回めのお便りを北京からお届けします。というような乗りで、長文を書いてみたいのですが、ラップトップ・コンピュータのバッテリーの残量があと2パーセントの上、『バッテリーは充電できません』との表示があり、もしかしたら致命的な事態となるやもしれないので、水曜日の朝(現地)にもかかわらず、怒濤の速度で、このお便りです。北京外国語大学の教授であり、ここ最近、『早稲田文学』や『すばる』誌上で、日本文学の《戦中期のミッシング・リンク》発見の偉業を続々と報告されている秦剛さんに、早稲田大学教授の鳥羽耕史さんとともにご招待いただき、月曜日から北京に来ています。明日(2018年9月13日)は清華大学にて、「千の耳を持つように ヒップホップ文学という実験」という講演、明後日(9月14日)は北京外国語大学にて、「日本語の声から『アジア文学』を探る」との演題の講演です。しっかりやってきます。あ、コンピュータのバッテリー残量の表示が1パーセントです……。このまま短文にして、送信しちゃったほうがいいかな? まあいいや。少しだけ続けます。北京、その印象はポジティブに強いです。ここのところ中国文化と日本文化、というのを考えていたのですが(日本語で、漢字を使って小説を書いていると、当然そういうことは考えざるをえない)、実際1000年〜2000年の幅で何が起きたか、が体感として理解され出しました。やはり、(こんなシンプルな言葉は幼稚すぎるのは承知で)中国は、凄いな、と。あと、会ってる人たちのおもてなしの心に、感動するというか圧倒されます。ええと、そろそろ送信します。最後まで、いろいろ呼吸してきます!/20180912」……こうして書き上げて、写真とともに送信の準備を進めている最中、僕の MacBook はブラックアウトしたのでした。結局、新聞社のエッセイは、手書きで書き→ iPhone で撮影した画像を日本に送り、そこから起こしてもらって、等のプロセスを踏みました。まあ無事に行ってよかったです。そして! よかったといえば、中国滞在で、これはもう本当に大きな体験ができました。単純に、日本文化と中国文化を歴史的に(というよりも美術的・建築的、総じて美学的文脈から)感じ取れたことがデカかったのですが、さまざまな文学者・研究者の方々とお会いして、ありえないような歓待によって連日満腹(かつ満肝、すなわちアルコールが肝臓一杯)、のみならず中国現代文学館の訪問時には「日本青年作家訪中団」の方々とばったり遭遇し、ていうか最前面でニコニコ笑って僕を見ているのは、君、君は柴崎友香さんでは! というわけで柴崎さんと、この訪中団(中上紀さんが団長を務められ、あとは谷崎由依さんと阿部智里さんが団員であられた)に合流。なぜか《交流プログラム》のひとつの末席に加わりました……。面白すぎる展開であった……。その日の午後から、大学での講演というのがスタートしたのですが、どちらも、大きな手応えを得ました。熱意のある聴衆に向かうと、こちらも真摯なパワーが倍増されます。どちらの講演も、ラジオの番組になったり、年が明けてから中国語訳が雑紙に載ったりすることも決まったので、ここからまた自分の言葉がひろまるかと思うと、ありがたいばかりです。それにしても、小説家や詩人も印象的ですが、秦剛さんのご夫妻や、秦さんのところの学生さんも本当に印象的で、というか知的? というかこまやか? いろいろ感動した。あと鳥羽耕史教授との二人旅もなんだか愉しかったです。鳥羽さんは観察力が凄い。で、このまま旅行記書いてると切りがないので、というか、まだ新しいコンピュータに慣れていないので、というか、ここが肝心なのですが、日本語入力システムもエディタ関係(すなわち筆記具)も全部変えなければならない事態に陥っているので、まあ、そんなには書きつづけられないのですが、しかし! 書き落としてはならないのは管啓次郎さんの「私的古川論」です。たとえば、そこに書かれたこのフレーズ、《肉声は文学にとってのブルロアラーだ》という一節。こうした評言は、何かを革新的に変え、進めると感じます。僕に関する文章である、という制限を超えて。本当に感動する文章です。こんな文章を、このサイトに寄せてもらえる僕は、幸せです。幸せ者なんだからコンピュータがクラッシュしても頑張らないとな(……本当は相当メゲた)。その、頑張る証し、ですが、お終いにふたつ提示しますね。ひとつ。来月発売の文芸誌「MONKEY」の《僕関連》ページの最終チェックを終えました。デザインを含めて、実にすばらしいです。そしてボリュームも含めて、本当に大事な、大事な、大事な《僕関連》ページが生まれる模様です。《僕関連》とはなんぞや? あと3週間ほどお待ちください。それから、三田村真さんとタッグを組んだ作品集『ポータブル・フルカワ』の装幀その他のデザインも上がってきました。……凄ぇ。これが「MONKEY」誌に続きます。次号「MONKEY」発売直後ではないですが、とはいえ時期はまた報告します。とにかく続々やります! つうか来週は朗読劇『銀河鉄道の夜』、うわあ!
20180921