【400字以内小説】#12 悪魔の魚

「悪魔の魚」

タコやイカが米英で気味悪がられて、悪魔の魚だ、と蔑まれている。そんなある日、天国の扉が開く。その扉の前には門番がいて、「さて、タコの足は何本で、イカの足は何本でしょう?」と尋ねる。答えられないと地獄に送られるのだ。タコを意味する英語 octopus の、その初めの oct- が8だという語源(ラテン語由来)からタコの足の数を即答できる人間はいるのだが、イカのそれに関しては英米人はほぼ答えられない。そこで、日本人ならばけっこう答えられて天国行きになるかと思ったら、門番の英語が聞きとれず、やはり地獄に堕ちかける。こうして天国の扉の前では英会話学校がつぎつぎ開校、やたら建て込むこととなる。

2020/05/12