【400字以内小説】#17 HELP

「HELP」

もはや救済を待つしかない。
その大雪の日に、彼女は庭に出た。
防寒服の類いはしっかり着込んだ。
非常食も持った(シーチキンの缶詰もあった)。
雪のドームを作った(いわゆる「かまくら」だ)。
数時間後、そのドームの入り口に、遭難者は現われた。
「にゃあ」と言った。雪の夜の猫だった。
「うわっ、あんた、大丈夫? 入りな。あっ、シーチキン、食べる?」
猫は魚肉をむさぼった。
そして彼女は悟る。
……あたしってば、この猫、……救済したん?
地上に希望があふれた。

2023/02/10