【400字以内小説】#12 悪魔の魚

「悪魔の魚」

タコやイカが米英で気味悪がられて、悪魔の魚だ、と蔑まれている。そんなある日、天国の扉が開く。その扉の前には門番がいて、「さて、タコの足は何本で、イカの足は何本でしょう?」と尋ねる。答えられないと地獄に送られるのだ。タコを意味する英語 octopus の、その初めの oct- が8だという語源(ラテン語由来)からタコの足の数を即答できる人間はいるのだが、イカのそれに関しては英米人はほぼ答えられない。そこで、日本人ならばけっこ


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【古川日出男の番外地】#2 ペスト

「ペスト」

X区X丁目・番外地 ここ数日、とは本年3月末のどこかから4月1日の朝である本日にかけて、ということだが、「東京(首都圏)は番外地化するのか?」と考えている。そしてアルベール・カミュの小説『ペスト』がふたたび世界でベストセラーとなってしまったなと考えている。私はいま現在、文芸誌「新潮」にて連載している『曼陀羅華X 2004』のその連載の初回から、この小説『ペスト』をこっそりと作品に紛れ込ませていた。3月


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【400字以内小説】#11 自慢合戦

「自慢合戦」

私は著名な映画監督と会う。その場で「この人は自分のソウルメートに違いない」と勘違いした私は、じつは私は3カ月で300近いアイディアが浮かんでしまい、とても小説には仕上げられそうにないので、そのうちの298のアイディアをあなたにあげたいと言う。映画監督はとても嫌な顔をする。それから撮影用のカメラを私に向けて、「じゃあ話して。1分間に1個のアイディアで、10分間だと10本ぶん。1時間に60本だから、298本ならば5時間……弱?


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