【古川日出男の番外地】#1 ナンバーガール

「ナンバーガール」

江東区豊洲6丁目・番外地 2004年に私は『ボディ・アンド・ソウル』という奇妙な小説を発表した。主人公はフルカワヒデオで、私・古川が実際に体験した出来事が多々含まれていた。この小説の第1章は、そして、次の文章で終わっている。「あさってナンバーガールが解散する」。このフレーズを含んだ挿話は、2002年11月28日のお台場でのライブを描写していた。ナンバーガールの、だ。それから17年が経った。私は


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【400字以内小説】#8 文字の声

「文字の声」

たとえば文字からモジやモンジという響きが聞こえても、そんなには驚かない。けど、たとえばタマゴという声が聞こえたら、やっぱり驚愕する。あたしは驚愕した。文字(という二文字)を見ていたら、いきなりタマゴ、タマゴって脳内に響いたから。うわぁ。こんなんじゃオチオチ読書もできない。そういうわけで、あたしは最初、ふてくされて不良になった。そのうち、こんなんじゃあ立派な大人になれないなあ、お嫁さんにもいけないよと考え出して(ちなみに当時


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【400字以内小説】#7 いま、ここにいないとしても

「いま、ここにいないとしても」

「ねえ、あの世ってあるの?」 「あの世ってなんだい?」 「いわゆる死後の世界」 「死後の世界は、あるよ。もちろんある」 「断言できるんだ?」 「だって、死後にも世界はあるのは当然だ。死んでからも世界は続いている」 「あのさ、意味の取り違えが、起きてない?」 「『死後の世界がある』ことと『死後に世界がある』ことはおんなじだ。だって、ある人間がさ、男でも女でも日本人でも外国人でもいいんだけどさ、


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【400字以内小説】#6 愛

「愛」

もしも私が殺人鬼だったとしよう。もしも私が地上のほとんど全部の人間を殺したのだとしよう。そして、とうとう最後の一人までも殺しえたとしよう。すると、私はこの地上に生きのびている唯一の人間なのだ、ということになる。それから、私は誰もこの私のことは殺してくれないのだとも悟る。そうしたら、ボロボロと涙を流すことだろう。誰か、誰か、私を殺して。そう叫ぶのだろうし、やがて現われる誰かに感謝することだろう。私を殺しに現われるその誰かは、きっと


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