サマーバケーションEP EPサイズの解説

構造というもの

夏になると、本当にありがたいことに文庫の『サマーバケーションEP』に重版がかかることが多い。わずかな部数だけれども、こういう瞬間はひたすら純粋に感動する。今年もそうなったので、短い解説をここにアップする。つまりEP(45回転のレコード盤。シングル用)サイズだ。

この『サマーバケーションEP』は、全部で36章から成っている。全部、主人公の〈僕〉の語りである。ただ、じつは奇数章と偶数章では、グルーヴが異なる。というのも、会話のシーンなのに鉤括弧がぜんぜん投じられていなかったり(現在行なわれている会話、との範囲内で)、不思議なブロックすなわち塊で書かれていたり、そういうのは全部、偶数章に来ている。

そして、最後の最後の偶数章、つまり第36章で、こういう奇数章のグルーヴと偶数章のグルーヴが、ある昇華というものを果たす。いちばんお終いの段落で、だ。そういうことを、著者の私はやった。