2022年3月28日 曼陀羅華AからZ #04 そしてRからY:渦巻 結局は「オウム真理教とはなんであったのか」との問いだ。それに尽きる。こうした問いは、たとえば「東日本大震災とはなんであったのか」と変奏させることもでき、「新型コロナウイルスのパンデミックとはなんであったのか」と、じき、多数の表現者たちが変奏するだろう。しかし、こうした記述には嘘が混じっている。私は、「オウム真理教とはなんであったのか」とは、じつは考えていない。こう考えるのだ、……オウム真理教とはなんであるのか? 続きを読む
2022年3月20日 曼陀羅華AからZ #03 感染爆発に見舞われるI以降からQ:運命 私の『曼陀羅華X』で、ちゃんとした名前が付けられて登場する人物(や動物)は相当に限定されている。啓という子供がいて、サンという犬がいる。が、その他にはいないと言ってよい。主要な語り手たちはみな、ただ単に「私」だし「わたし」だし「ワタシ」といった自称で話していて、かつ、それぞれの本名というのを決して明かすことがない。 ただし最初からそうであったわけではない。私続きを読む
2022年3月13日 曼陀羅華AからZ #01 始まりのAからFあたり:数字 私の小説『曼陀羅華X』は、単行本版は原稿用紙に換算すると、ちょうど770枚のボリュームである。それが「多いか」「厚いか」は読者の判断にゆだねる。私としては、今回の著作は「枕にはならないよ」と言える(ちなみに鈍器にもならない)。ところで雑誌掲載時・連載時には、この小説はどれほどのボリュームがあったか? 私は単純に、文芸誌「新潮」に入稿したすべての原稿を連結して、ダブったタイト続きを読む